サルビアの育てかた
 私の顔を眺めながら、ヒルスはぽつりと呟くように言う。

「父さんと母さんに見せたかったな……」
「えっ?」
「レイのウェディングドレス姿、見てもらいたかった」

 どことなく切ない表情になっている。
 でも私は、全然寂しくなんかないよ。

「ヒルス、忘れちゃった?」
「何を?」
「空を見上げるんだよ。お父さんとお母さんはきっと空の向こう側で私たちを見守ってくれているから」
「……そうだな。ちゃんと覚えてるよ」

 すると彼はまた優しい笑みを浮かべ、私と並んで空を見上げた。

(お父さん、お母さん。私、今すごく幸せだよ。ヒルスと一緒ならこの先もきっと大丈夫)

 心の中でそう呟いた。
 しんと静まり返った裏庭で、風が通り過ぎた時のこと。

 ──二人共おめでとう
 ──レイ、とっても綺麗よ

 ハッとした。遥か遠くの方で……ううん、すぐ近くかもしれない。小さくはっきりと、そう聞こえた。
 父と母の声が、たしかに聞こえたの。
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