暇な治療院
 さあさあ開業してから一か月が経ちましたよ。 早いですねえ。
なんとか患者さんも来てくれるようになりました。
半分は母親の紹介なんだけどね、、、。
 そうでもしないと来ないからさあ、、、。
 「こんにちは。」 朝も10時に来たのは近藤文江さんです。
「肩が凝って凝ってどうしようもないのよ。」 そう言いながらベッドに寝ようとしますが、、、。
「ちょい待ち。 その前に座ってもらってもいい?」 「あんたのほうを向いてかい?」
「そうそう。 じゃなくてあっちを向いてよ。」 なんとか文江さんを向こう向きにして肩を調べましょう。
 「ずいぶんと丸くなったねえ。」 「そうかい? 丸くなった?」
「いっつも前屈みになってるでしょ?」
「そうかもしれないなあ。 台所もそうだしねえ。」
 ある程度のことを確かめてから寝てもらいます。 この人ね、揉み始めると鼾をかいて寝ちゃうんだ。
時々「物足りないからもうちょっとやってよ。」って言ってくる。
誰も居ない時ならいいけど後に患者さんが待ってると断ることだって有る。
じゃないと「あの人だけずるーーーい。」って言ってくる人が居るからさあ。
誰とは言わないけど居るからさあ、、、。
 一人でもそういう人が居たら後が気まずくてやりにくいんだよなあ。
だから延長は余程に暇な時だけね。 最初に割り切っておく。
 ぼくらは県知事免許の時に免許を貰ったんだ。
30年前は取るって言うより「これくらい答えられたらあげましょう。」って感じだったから。
 その時のクラスメートは10人くらいだったかな。
毎年毎年、数人がリタイヤして入学当時よりは減っちゃったけど。
 でもね、そのクラスメートのほとんど全員と親しくはならなかった。
(付き合っても無意味だな。)って思ってたから。
 その通り、卒業してからまともに会ったことは無い。
在学中だって仲は良いようで悪かったんだ。
 まともに話したいって思ったことは無かったね。 悲しいけど。
 そいつらと決別することを決意したのは検定試験の時だった。
福岡での試験が終わった日、やつらは大分県へ出発した。
滑り止めに大分で同じ試験を受けるんだって。
でも、その割にはなんか楽しそう。 聞いてみると、、、。
 「今晩は何処の店で飲もうか?」って話し合っているのが聞こえてきた。
試験より飲み会が目的だったんだって。 うんざりしたね。
その中にはもちろん小学生の頃からの親友?も居た。
でも結局はその時だけの友達だった。
以来、35年、やつらはどうしてるかな?
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