君を大人の果実とよぶ。
京子の次に牧がシャワーを浴びて、
上がってくる頃にはいい時間になっていた。
京子が部屋を出ようとすると、
牧もさっさと身支度を整えていた。
「…え?」
「え?」
牧が玄関までついてくるので、京子は顔を上げた。
「まさか、一緒に出勤するつもりですか?」
「え、うん。だめ?」
「だめ…というか、なんというか…」
「えぇ!?ゴールは一緒なんだから一緒に行こうよ!」
へらへら笑いながら眼鏡をかけて靴を履いている。
大体、オペ日に看護師と同じ時間に出勤とは
どんな立場でもご法度ではないのか。
外科医のカンファレンスは8時前には始まるものだ。
大抵の医師はカンファが始まる前に
病棟を歩き回って、自分の患者の回診をする。
カンファが終わる前に、手術を受ける患者は
手術室に入室しているだろう。
この時間に、自分より後から家を出ろと
言う方が無理があるか、と自分を納得させて、
京子は渋々頷いた。
「なんなら手でも繋いじゃうかい?」
「繋ぐわけないでしょっ‼邪魔‼」
差し出された手をパチンと振り払って
京子は先に部屋を出た。