君を大人の果実とよぶ。



病院に着いて一旦別れてから、
手術室で再開するまでは早かった。

というのも、オペ室スタッフでの朝礼中、
消化器外科からかかってきた一本の電話によって、
手術室全体に緊張が走った。


「大型トラックとバスを含む事故で
 交通外傷多数受け入れとのことです!」


電話を取ったスタッフが受付全体に叫んだ。


「どこから?」


主任がすかさず言うと、メモをとっていた
看護師が半ば震え声で言った。


「消外から脾損傷、肝損傷。
 心タンポも見られるため
 心外の対診が入っているそうです。

 骨盤骨折の患者もいるようで、
 すぐに整形から連絡があるだろうと」


脾臓、肝臓、骨盤骨折…
どれも大出血のリスクがある。


「一旦、定期の入室控えますか」


主任が師長に向かって言うと、
師長は頷きながらピッチで看護部に
許可の連絡を取り始めた。

こういった緊急事には、定期手術を一旦止めて
緊急患者を受け入れる態勢に入ることが稀にある。


「とりあえず第一優先で消外の開腹の部屋作ろう」

「はい!」


看護師数名が部屋準備に走り出していく。


「バスってことは、怪我人は多そうですね」

「うん…」


京子が隣にいた後輩に頷いた直後、
再び受付の電話が鳴った。

周りでは麻酔科医や看護師が声を上げ、
互いに指示を出し合いながら走り回っている。

京子が受話器を取ると、
騒々しいアラーム音を背景に、
女性医師の厳しい声が聞こえた。


「はい、オペ室看護師、千秋です」

「婦人科の前原です!

 グレードA‼」



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