君を大人の果実とよぶ。
産婦人科の言う、"グレードA"とは、
妊婦の患者で、母子どちらかに生命の危機がある
超緊急な状態において、早急に帝王切開を行い、
母子の救命を行う必要がある、宣言である。
東南大では、医師のグレードA宣言から
15分以内に胎児を母体から取り出すことを
目標としている。
京子は前原の叫びに息を飲み、
一旦周りを見渡した。
既に受付は空状態。
全スタッフが緊急手術受け入れに向けて
あちらこちらへ奔走している。
とりあえず、毎年年末に行っている
シミュレーションを思い返して、
マニュアルの対応を思い出す。
「名前とID、血型お願いします」
「タキモトマイカさん、24歳、A型プラス!
IDはー、今わからないわ、ごめん!
でも、瀧本教授の娘さんで、
事故に巻き込まれて子宮破裂だからすぐ出したい」
子宮破裂というワードに京子は血の気が引いた。
「わかりました、準備します!」
「頼んだ!」
電話を切った瞬間、
前原達、婦人科の医師と救急看護師は
手術室にすぐ向かってくるマニュアルになっている。
人手が圧倒的に足りない。
京子は手術室のホール中に散らばっている
麻酔科医と看護師を集めるため、
全体アナウンスのできる電話を手に取った。