君を大人の果実とよぶ。
こんなこと、したことないけど…
各部屋にあるスピーカーに繋がる電話。
いつもは患者入室の際などでしか使わないが、
使用していいか悩む時間もない。
京子は受話器に向かって
冷静に、かつ切迫感のある声で言った。
『グレードA宣言がありました。
手の空いている麻酔科、看護師は
オペ室10番で準備をしてください』
ちなみに、手術室10番は京子が勝手に選んだ。
患者が運ばれてくる廊下からもっとも近い部屋だ。
本来は部屋を決めるのはリーダーの仕事だが。
勝手に決めちゃって怒られるかな…
などと思わないこともないが、
そんな雑念は捨てて、京子自身も10番に走った。
部屋に入ると既に渚が手術台を準備し、
干場がベビー用のウォーマーベッドを整え、
細谷は器械を展開して手洗いに行こうとしていた。
さすがだ…京子が言う前に、
てきぱきと動きつつ、にやりと笑みを浮かべた渚が
京子を見るや否や言った。
「全体アナウンスするなんて、先輩やるぅ」
「私が叫ぶだけじゃ集まらないでしょ」
「フッ、たしかに…来た!」
移動用モニターの音が聞こえた。
京子は受付に走り、10番まで誘導しに出た。