君を大人の果実とよぶ。
京子が受付のホールに出ると、
ストレッチャーが列をなしてやってきた。
一番前に見える患者が瀧本舞香だろう。
ストレッチャーに患者と共に乗り込み、
子宮からの出血を必死に抑えている前原が見える。
前原のスクラブは既に血だらけであり、
救急看護師がショック状態になっている患者を
大声で励ましていた。
勢いよく来たストレッチャーに手をつける瞬間、
無意識に後ろのストレッチャーに目がいった。
例の交通外傷による、脾損傷の患者だろう。
これまた大量出血しており、
その原因は腹部に突き刺さった何かだった。
既に輸血されていた患者のそばで、
必死にポンピングしているのが牧だった。
輸血バッグの血液をシリンジに溜めて、
一度に大量に患者に輸血する。
そのポンピングをしているということは、
患者はかなりの低血圧で危機的状態なのだろう。
珍しく、やや焦りの汗が見える。
京子が廊下を右に、
牧が左に曲がる直前、
牧が顔を上げて、京子と目が合った。
「ッ…!」
ほんの一瞬だった。
だが、確実に。
京子が頷くと、牧もはっきりと頷いた。
互いに、救う患者は違うけれども、
士気が上がる瞬間を感じ合った。


