君を大人の果実とよぶ。


移動者AとBが、牧のそばに駆け寄った。
それに合わせて少し近づく、移動者CとD。

可愛らしい雰囲気の移動者Aの名札には、
長澤澪菜(ながさわみおな)』の文字。

見たところ年下に見えるが、
帽子とマスクをしていて目元しか見えない以上、
年齢不詳だ。

大きな瞳に綺麗な二重、
こんな可愛い美少女をこの男が…


「みおー!?
 めちゃくちゃ久しぶりーって思ったけど、
 めぐみちゃんもいる‼」


めぐみちゃんと呼ばれた移動者Bは、
あ、先輩だな、と京子は確信した。

京子はすぐさま名札に目を向ける。
黒川恵(くろかわめぐみ)』。

艶のある黒髪ボブが、帽子から少し顔を出している。

牧を見上げるその眼差しからして、
牧のことをよく知る人物なのだろう。

視線が色っぽく、左目の下の黒子がまたいやらしい。

おまけにこんなナイスバディな美女をこの男が…


「恵ちゃん、オペ看さんになったの?」

「はい。またお世話になります、ジンさん」


「ジンさん!?」というセリフが、
この部屋中のスタッフでシンクロした。

もちろん、京子も同様に、だ。

牧がニコッと笑って、恵たちに一歩近づく。

京子は思わず、こればっかりは脊髄反射で、
牧の手が他のものに触れないよう阻止した。

清潔・不潔に気をつけるのは、
手術室看護師に染み付いた性だ。

その動きを見た恵が、クスッと雅な笑みを浮かべた。


「ここの看護師さんは、清潔不潔に厳しいですよね」


一瞬目が合ったかと思ったが、
すぐさまその視線は牧に向けられていた。


「手洗いする前だったら、
 もっと近づけたんだけどねぇ」

「ふふ、相変わらずですね、ジンさんは」

「そう?」


牧が器械出し看護師からガウンを受け取ると、
移動者A、B…いや、
澪菜と恵が牧の後に続いた。

京子はなんだか阿保らしくなって、
ガウンを着せずにその場をあとにした。

ドアを閉めたところで、
背中から牧の声が聞こえることもなかった。

恵の意味ありげなあの視線が脳裏に浮かぶ。


なんか…なんだろ…


心のもやもやが晴れることなく、
京子は再び受付に戻った。

こうやって、どんどん年数を重ねるごとに
姑扱いされていくのだろうか…。


「っていうか、ジンさんって、なに!」


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