君を大人の果実とよぶ。
『千秋さん、よろしくお願いします』
『よろしくお願いします』
準備をしながら挨拶をする。
恵が牧目当てでこの手術の見学を希望したことは、
さすがの京子にもわかっていた。
手術自体にも、京子の器械出しにも興味はない。
そんな人に、何をどう教えていいのか
わからなかった。
ただでさえ教えるのが得意ではないのに、
自分より年上で、かつ看護師としても先輩の恵が
見学につくのは、正直やりづらい。
だが、仕事は仕事。
それとなく会話を試みたりもしてみたのだ。
『今回は執刀は工藤先生ですけど、
使うものは基本牧先生に合わせていいと思います』
『へぇ~…』
そんな色っぽい声で相槌を打たれても…
京子は集められた器械を見せながら続けた。
『デバイスは大体ハーモニックという器械で、
吻合はこのシグニアを使うと思います』
うんうん、と頷く恵。
なかなか興味を持ってくれているのかと、
ここで勘違いしたのが間違いだった。
調子に乗って、京子が説明を続けようとすると、
『お願いしまーす』
と、執刀の工藤が手術室に入ってきた。
『あ、工藤先生、お願いしまーす!』
そう言って、そそくさと恵は
工藤の下へ行ってしまった。