君を大人の果実とよぶ。
先生への挨拶は大切だ。
何も悪いことじゃない。
京子は手に持っていたハーモニックとシグニアを
そっと籠の中に戻した。
そして、静かに台に清潔な布を広げ、
器械台の作成に入った。
『大変そうだねぇ』
麻酔科の上級医、
東郷先生が麻酔器の奥から顔を出した。
そして、見た目に反する小さい声で呟いた。
『頑張れ千秋。ボーイズビーアンビシャス』
『ふふ、がんばります…』
半べそかきそうになりながら、京子は頷いた。
それから工藤の下へ器械を聞きに行こうとすると、
恵が「あ、そうだ」と続けた。
『工藤先生、使う器械は、
ハーモニックとシグニア?ってやつで、
いいですか?』
これにはさすがに目を見開いた。
なんと適応力の高いことか。
『あー…はい。それでお願いします』
工藤の視線がちらっとこちらを向くが、
恵はにこっと微笑んで続けた。
『はい。了解です』
それから振り返ると、千秋が後ろにいることに
気づいていなかったのか、驚いた様子を見せた。
『じゃあ千秋さん、それでお願いします』
『あ、はい。ありがとうございます』
千秋は礼を言って器械台の方へ戻った。