君を大人の果実とよぶ。
術中、牧が工藤に指示を出すことは少なかった。
反対に、恵と牧の会話の方が多い程だった。
『これはなんていう器械なんですか?』
『これはメリーランドだね。
基本はクローチェなんだけど、
僕は血管とか神経を通す前には
メリーランド使いなって教えてるかなぁ』
『へぇ~』
術中、恵が京子に質問することはなかった。
わからないことはすべて牧に聞く。
べつに悪いことではない。
牧は優しく恵に教えていた。
京子も、自分が教えることを思えば、
寧ろ楽で有難かった。
『恵ちゃん、香水つけてる?』
『あら、イヤでした?』
『ううん、すごいいい匂いだなと思って』
『えー嬉しい!』
京子は工藤にハーモニックを渡した。
『きょんちゃんは香水つけないから、なんか新鮮』
器械が作動している音が響く。
『若い子はそこまで気にしないから。
私ほら、もうおばさんだもん』
ハーモニックの作動音が止む。
『そんなことないない!』
ハーモニックを受け取り、再びメリーランド。
この繰り返しだ。