君を大人の果実とよぶ。
『やっぱりさすがですね、千秋さん』
小声に対して、京子もつられて小声になる。
『何がですか?』
『いや、何も言わなくても渡してくれるので。
ラパ系も得意なんですか?』
『いえそんな。大体でやってますよ』
そう小さく笑ってハーモニックを渡す。
『シグニアはパープル45ですか?』
『そうですね』
『とりあえず二つ?』
『ですね。さすがです。ありがとうございます』
工藤の目線だけがチラッとこちらを向いた。
その一瞬に手が止まったことは、
きっと牧も恵も気づいていないだろう。
京子は「こちらこそ」と
頷きに近い小ささで頭を下げた。
工藤先生でよかった…
そこから他愛もない会話が
同時に2つ繰り広げられていた。
手術は着々と進む。
カメラ持ちをしている研修医だけが、
眠気に襲われ白目を向いていた。