君を大人の果実とよぶ。
工藤が京子を連れて帰ったのを、
牧は呆然と見つめていた。
2人の姿が見えなくなっても、
しばらくその場を動こうとしなかった。
「仁さん」
恵が同情するように、握った手に力を込めた。
そして、牧が見つめる先を一緒に見た。
「そんなに好きなの?あの人のこと」
「…」
牧は何も答えなかった。
天然パーマが、夜風に揺れる。
悔しさとも、嫉妬とも取れないその表情は、
牧が何を考えているか知るには、
あまりに難しかった。
色付き眼鏡が、それを邪魔している。
いや、本当に邪魔なのは…
恵の左目の下にある黒子が、ピクリと動いた。


