君を大人の果実とよぶ。
「患者状態的に、再建まで日は待てない」
牧の言葉に、京子はモニターから目を話すことなく言った。
「この人、アオルタが随分細いですけど、なにか?」
「もともと先天性心疾患があるけどね」
「あ、そうだ!たしかロスしてましたっけ」
「そう。だからまた厄介だよ」
「たしか、下行に狭窄も…?」
「そう!よく知ってるね、きょんちゃん」
「前回オペつく前にCT見たので…」
「さっすがぁ~!」
「…!」
久しぶりに聞いたな、それ。
思わずにやけそうな口元を、
小さな咳払いをして誤魔化した。
専門用語の会話についていけなかったのか、
恵はむっとした様子で牧の腕を引いた。
職場でのその行動に、京子だけでなく
他の看護師も目を見開いていた。
「ねぇ、仁さん。
私も心臓の手術、興味あるんです。
色々ゆっくり教えてほしいなぁ」
「恵ちゃん、僕は消化器外科医なんだけどなぁ~」
「えー、でも心臓もできる、すごい先生なんでしょ?
仁さん、色々器用そうだし」
「ふふ、試してみるかい?」
「もぉ~!」
京子は何も言わずパソコン前の椅子に腰かけて
電子カルテに向き直った。