君を大人の果実とよぶ。



誰かが同情の気持ちの籠った手で
京子の肩をポンッと叩く。

それがやけに虚しさを助長させた。

昔みたいに、牧と仕事の話がしたい。

そう思ったのも束の間、
現実を見せつけられた気分だった。

椅子を滑らせた渚が、
後ろから声をかけてきた。


「怒っていいですよ、先輩」

「べつに、怒ってない」


先程、澪菜に向けたときと同じように
思いっきり目を細めて渚の方を見た。


「ぜんっぜん、目が笑ってないです。
 むしろ…なんかつらい」

「…ごめん」


なんとなく、手術予定のページを開く。

工藤の緊急手術に、牧の名前があった。

牧は呑気に恵と話しているが、
そろそろ手術室に行かなくていいのだろうか。


なんて、言う必要もないことか…


「きょんちゃん、僕の部屋どこー?」


目の前の大画面を見たらわかるのに。

なんでわざわざ聞いてくるの…


「10番です」


京子は振り向くことなく小さな声で答えた。


「きょんちゃん…?」

「牧せんせ、前に書いてありますよー?」


澪菜がどこからともなく話している。

京子は今度こそ牧の方を見ることなく、
立ち上がって受付を出た。


なんなの、もう…


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