君を大人の果実とよぶ。
京子が受付を離れたあとを、
牧は無情にもついてきた。
どうせ牧が話しかけてきても、
必ずあの二人のどちらかが割って入ってくる。
その度にやり取りを見せられて、
たとえ恋愛感情がなくてもイヤになる。
そうだ。
たとえ、これが恋じゃなくても…。
「きょんちゃん!」
そう何度も呼ぶ声を無視して、京子は一番奥の、
今日は使われていない部屋に入った。
局所麻酔用の狭い手術室で、
普段は電気もついていない。
誰もいないことを確認して足を止めると、
京子は部屋までついてきた牧に向き直った。
手術室はドアの小窓のみで、
外の明かりが入る窓は一つもない。
電気をつけなければ、そこはほぼ暗闇だ。
牧の顔はよく見えなかった。
「きょんちゃん、どうしたんだい?」
どうしたかって…?
もう限界だった。
苛立ちがどんどん増していく。
周りに人がいないと、
こんなにも爆発しそうなほど
色んな感情が込み上がってくるものなのか。