君を大人の果実とよぶ。
緊急手術の部屋を出て手洗いをしている間、
顔を出してきた渚に牧はこっそり打ち明けた。
その後部屋に戻って、ガウンを受け取り、
ついてきた渚に介助を頼む。
「それはヘビーですね」
「だよねぇ…」
ガウンを着せながら言う渚の言葉に、
牧はため息が出るばかりだった。
「マーティみたいなこと言うんだ」
「なんですかそれ」
「知らない?
ロバート・ゼメキスのバック・トゥ・ザ・フューチャー。
マイケル・J・フォックス…」
「聞いたことあるけど観たことない」
「そう…」
牧がまた一つため息をつくと、
渚は最後の紐を結ぶ介助をして言った。
「先輩、たくさん我慢してましたよ…」
牧はチラッと渚を見てから、
患者越しに正面に立つ工藤を見た。
工藤もこちらを見ていたが、
マスク越しでも伝わってくる何かがあった。
目が合ったところで、工藤が頷く。
「僕も、そう思います」