君を大人の果実とよぶ。
京子は各部屋にあるカメラを見れる
モニターを操作して、牧の部屋を映した。
術野ではなく、部屋全体を見ることができるものだ。
たしかに、牧と浅野のスピードに
恵がついていけていないことはよくわかった。
だが、誰しも初めてはそういうものだ。
京子も初めてこの手術につくときは
緊張もしたし、ついていけなかった。
問題は、その手術に入る時期と、
いかに事前に勉強したかということだ。
基本ができていないのに、
応用力が必要なハイレベルな手術につくことは、
患者にとっても危険なことだ。
それがたとえ、どんなに優しい医師の
手術だとしても。
「先輩、代わってきたらどうです?」
「はい?」
渚の思いがけない言葉に、
京子はモニターから視線を外した。
渚の表情は至って真面目だった。
「黒川さんに、違い、見せつけてきたらいいのに。
私ならそうするなー」
干場が頷いた。
「見せつけるかはおいといて、
門脈再建のところだけでも
慣れた人が入るべきだろ」
「それなら渚か干場さん入ってくださいよ」
「先輩が入った方が、牧先生喜びますよー?」
「その代わり黒川さんに殺られそう」
干場のその言葉が、やけに真実味を帯びていて
京子はとても乗り気になれなかった。