君を大人の果実とよぶ。
千秋が部屋に入ると、一瞬こちらを見た
牧と、恵とも目が合った。
恵の器械台は、かなり散らかっていた。
焦れば焦る程、こうなることを
京子はよく知っている。
「あの、なにか…?」
浅野の背後から声をかけると、
術野から目を反らすことなく言った。
「ごめんね。僕あと1時間半後ぐらいに
会議に出ないといけなくて…
それまでに門脈再建だけでもしてしまいたいし、
今だけ手伝ってもらえるかな」
術野を覗き込むと、とてもまだ門脈再建まで
いける状態とは言えない。
ここから1時間半で再建を終えるとなると、
たしかにスピードは必要だろう。
「あ、えっとー…わかりました」
恵の方をチラッと見るも、
恵は針糸類をさばくのに必死だった。
「黒川さんがどうこうじゃないからね。
今回はイレギュラーで急ぎたいっていう
僕の勝手な都合で…ごめんね」
「いえ、お気遣いなく」
恵は浅野の方を見ることなく言った。
めちゃくちゃ気にしてるー…。
ここで割って入らないといけない
こっちの身にもなってほしい。が、
これも仕事だ。
京子はポケットの中身をすべて出し、
袖を捲って手洗いの準備をした。