君を大人の果実とよぶ。
京子が部屋を出たタイミングで、
浅野はもう一度恵に言った。
「ごめんね。嫌な気持ちにさせちゃったかな」
「私が遅いのが悪いんです、すみません」
「いやいや、初めては誰でもそういうものだよ。
門脈再建さえ終わったら、前立ちは工藤くんに
代わってもらうから、その時また戻ってね」
「はい…」
恵がチラッと牧の方を向くも、
牧は何も言わずに術野を見ていた。
「牧くんも、ごめんね」
「え、なぜです?僕は誰でも…」
「いや、今から1時間半で門脈再建っていう、
プレッシャー?」
「あぁ!そっちですか」
牧はニコッと目元を細めて言った。
「きょんちゃんがいれば、余裕ですよ!」
そう言って楽しそうに、
持っていたケリーを振って遊ぶ。
早く来ないかな、と主人を待っている
犬のように、尻尾を揺らしていた。
「本当、好きだねぇ」
浅野がおかしそうに言うと、
牧は「えぇ」と頷いて、
再び術野に目を落とした。