君を大人の果実とよぶ。
京子は手洗いから戻ってきて、
外回りからガウンを受け取った。
恵が器械台の上を片付けている横で
手袋をはめる、この空気感。
気まずすぎる…
これも仕事だと言い聞かせながら、
京子は恵と牧の間に立った。
恵からの視線を気にしつつ、
京子は器械台と術野を見て
今の現状を把握した。
まだ剥離は途中。
これから血管を確保していって、
再建するって感じか…
牧が出した右手に、京子は先の細いハサミを、
左手には鑷子(ピンセットのようなもの)を渡す。
「さすがだねぇ」
牧はそう言って、ハサミ、医療用語でいう、
メッチェンを駆使して、組織の剥離を進めていく。
軽く出血したタイミングで、浅野が手を出す。
モスキートを渡し、牧には糸を。
そのやり取りに、言葉はなかった。