君を大人の果実とよぶ。
門脈再建が無事終わったところで、
全員で時計を見上げた。
15時45分。
浅野の会議開始15分前だった。
「ありがとう。間に合うよ」
渋くも爽やかなその声に、
京子はほっと肩の力が抜けた。
「じゃ、あとはよろしくね。牧くん」
「はい。ありがとうございました」
浅野と一緒に、京子も手を降ろした。
「千秋さんありがとう。
おかげで助かったよ、本当に。
さすがとしか言いようがないね」
京子は頷いて、浅野と同じく脱いだガウンを
段ボールに捨てた。
「ありがとうございました。
何事もなく進んでよかったです」
ペコリと頭を下げてから、
牧の方を向くと、色付き眼鏡の向こうで
満面の笑顔が見えた。
「ッ…!」
いつも散々見てきたその笑顔に、
不思議とドクンと胸が跳ねた。
そんな自分に違和感を覚えつつも、
京子は浅野と共に手術室をあとにした。