君を大人の果実とよぶ。
あんな笑顔…ずるい。
そう思っていたのは、京子だけではなかった。
京子が部屋を出たあと、
恵は京子が立っていた位置に戻った。
「すみません、仁さん」
「なにがだい?」
「私がついていけなくて。
慣れた人が良かった?」
「今日は浅野先生の会議があったから
少し飛ばしたかっただけだよ。
僕は基本、誰でもいいからねぇ」
"誰でもいい”
その言葉が、恵の中で変に引っかかる。
「誰でもいいんだ。
この人がいい、とかもないの?」
「それはないこともないけど~…」
「…あるんだ」
「でも、ついてくれるだけで有難いからねぇ
わがままは言わないことにしてるんだ」
「…私がいいって、いつか、
思ってもらえるようになれないかな」
「ふふ。どうだろうね」
牧は長い指で十二指腸を持ち上げていた。
これから牧が何をしようとしているのか、
恵には全くわからなかった。