君を大人の果実とよぶ。



手術時間は予定よりかなり伸びたが、
なんとか日勤帯で吻合まで終了した。

創を閉じて、患者が退室し、
牧が手術室を出る頃には、
19時を過ぎていた。

更衣室から、薄暗い廊下に出ると、
着替えを終えた恵が立っていた。


「あれ、恵ちゃん。まだいたの?
 17時で降りたのに?」

「仁さんに、会いたくて」

「…そっか」


牧は微笑んで、恵の隣に立った。


「今日はありがとうね」

「ううん。色々と、手間取らせてごめんなさい」

「これからだよ。大丈夫」


一度帰って、また戻って来たのだろう。

仕事終わりとは思えないメイクと、
漂うお風呂上りのような香り。

胸元を強調したタイトワンピースは、
これからパーティーにでもいくのかと
言わんばかりの輝きだ。


「頑張ったご褒美、もらおっかな」

「ご褒美?」

「うん。ドライブ、とか…?」


誘うような視線。

恵の妖美な雰囲気は、どんな男をも
虜にしてしまうのだろう。


「…わかった」

「本当!?」


輝く瞳に、牧は目を細めて言った。


「車回してくるから、下にいてくれる?」

「うん!」



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