君を大人の果実とよぶ。



「私は、本気で仁さんが…」

「恵ちゃん、もうやめよう」

「どうしてあの子なの?
 私の方が、絶対仁さんを幸せにできる!」

「……」

「来るもの拒まずなんでしょ?
 だったら私が…んッ!」


牧の突然のキスで、
車内に静けさが訪れた。

恵はその場で目を見開いて、
呼吸することを忘れていた。

状況が理解できていないわけではなかった。

ただ、ずっと望んでいた幸せを感じていた。

ほんの数秒だけのキス。

それだけで、恵の心は一気に持っていかれていた。

だが、すぐに唇は離れていく。


「仁…さん…」


溶けた眼差しで、鼻先が触れ合う距離にいる
牧のことを見つめる。


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