君を大人の果実とよぶ。
風呂上りだったのだろうか。
ふんわりと香るのは、恵とは違う、
優しいホワイトムスクの香りだ。
清潔感と甘さのある、なんとも京子らしい。
「前言ってた、清算するって…?」
京子がこちらに向き直ったところで、
牧は少しだけ京子に近づいた。
靴のままで行ける、ギリギリのところまで。
いつもなら一歩近づくと一歩下がられるが、
今日は違うことにまた驚いた。
「逃げないんだー」
「逃げてほしいなら逃げましょうか?」
「逃げたいなら逃げていいよ」
牧が虚しい笑みを溢すと、
京子は探りを入れるように覗き込んできた。
「…何しに来たんですか?
明日も朝からオペでしょ?」
「うん」
牧は京子の瞳を真っすぐに見つめた。