君を大人の果実とよぶ。
「抱きしめたい」
「なっ…!」
「…って言ったら、イヤだ?」
「イヤです」
牧が首を傾げるより早く、京子は答えた。
「ふふ、そっか」
俯いた牧が離れようとすると、
京子がゆっくりと腕を広げた。
「抱きしめてほしい、でしょ?」
「っ…!」
息が、止まった。
反射的に顔を上げる。
玄関の明かりは何も変わっていないはずなのに、
京子が一段と眩しく見えた。
「…違いました?」
挑戦的な目で見てくるものの、
京子の頬はみるみるうちに赤らんでいく。
その姿があまりに愛おしくて、
牧の表情筋という筋のすべてが緩む。
「ううん、合ってる。
抱きしめて?」
牧は引き寄せられるように、
京子の腕の中に入っていった。