イケメンIT社長に求婚されました─結婚後が溺愛本番です!─
○葉山律とエリザベス・ウィンザーのはじまり
ニューヨークの名門高校。
そこでは、葉山律とエリザベス・ウィンザーというふたりの名前が、常に話題の中心にあった。
アメフト部のキャプテンにして、東洋人離れした端正な顔立ち。学業成績もトップクラスの「完璧すぎるジョック」葉山律。
対するは、金髪碧眼、スタイル抜群、発言力も影響力も全米級の「クイーン・ビー」エリザベス・ウィンザー。チアリーダーの頂点。
誰もが言った。「付き合えばいいのに」「お似合いすぎるでしょ!」
──しかし、当の本人たちはというと。
「おはよう、ミスター完璧。今日も笑顔のない朝ね」
「おはよう、ウィンザー。今日も態度がでかいな」
廊下ですれ違えば、軽い皮肉をひとつ。
視線が合えば、ため息をひとつ。
律(彼女の体型はまったく俺の好みじゃない。スレンダーすぎて色気がない。それに、性格も攻撃的すぎる)
エリザベス(私が好きなのは、もっと可愛い女の子!律はマッチョで汗くさそうで苦手!)
……つまり、絶望的にタイプじゃなかった。
だが、その「正反対」の関係が、なぜか誰よりも絵になっていた。
──そして、プロム当日。
体育館には煌めく照明と音楽。
それぞれのパートナーと踊るカップルたち。
高校生活の最後を飾る、華やかな舞台。
エリザベスは、彼女として連れてきたガールフレンドに、開始30分で裏切られた。
「ねえ、先輩と踊ってくるだけ。すぐ戻るって」
そう言った彼女は、戻ってこなかった。
気づけばエリザベスは、ひとり。
体育館の裏手で、ひっそりと涙をこぼしていた。
目は真っ赤に腫れていた。
「……エリザベス」
聞き慣れた低い声に、彼女は顔を上げる。
「……なによ。私を笑いに来たの?」
「……俺と、プロムに出ないか」
「は? 嫌よ。私のこと、好きなの?」
「いや、全然」
「はあ!? じゃあ放っといてよ!」
「俺も、さっき振られたばかりだ。
……高校最後の夜、ふたりで泣いて終わるのって、ダサいだろ?」
その言葉に、胸がぐらりと揺れた。
涙を隠す余裕もないまま、エリザベスは立ち上がり──
律の手を、無言で取った。
そして、ふたりが再び会場に姿を現したとき──
その美しさ、迫力、完璧なペアとしての存在感に、全校生徒の視線が釘づけになった。
律の元カノはグラスを落とし、
エリザベスを裏切った元ガールフレンドは青ざめた。
(……ざまあ。完璧なパートナーが、ここにいる)
音楽が始まる。
ふたりは何も言わず、ぴたりと呼吸を合わせて踊った。
足運び、目線、手のひら。すべてが、なぜかしっくりと馴染んだ。
それは、「恋人」ではない。
だけど、誰よりも強く支え合える、そんな対等な相棒の踊りだった。
──数ヶ月後、ふたりは同じ大学、ハーバードに進学する。
「まだ付き合ってないの?」
「……あのふたりは、なんなんだ」
そんな声は、何度も聞いた。
だけど、ふたりは笑って肩をすくめる。
「私たち、ちょっと相性悪すぎるからね」
「でも、気は合うんだ。不思議と」
──そう、最強で、最高の「親友」になったのだった。
そこでは、葉山律とエリザベス・ウィンザーというふたりの名前が、常に話題の中心にあった。
アメフト部のキャプテンにして、東洋人離れした端正な顔立ち。学業成績もトップクラスの「完璧すぎるジョック」葉山律。
対するは、金髪碧眼、スタイル抜群、発言力も影響力も全米級の「クイーン・ビー」エリザベス・ウィンザー。チアリーダーの頂点。
誰もが言った。「付き合えばいいのに」「お似合いすぎるでしょ!」
──しかし、当の本人たちはというと。
「おはよう、ミスター完璧。今日も笑顔のない朝ね」
「おはよう、ウィンザー。今日も態度がでかいな」
廊下ですれ違えば、軽い皮肉をひとつ。
視線が合えば、ため息をひとつ。
律(彼女の体型はまったく俺の好みじゃない。スレンダーすぎて色気がない。それに、性格も攻撃的すぎる)
エリザベス(私が好きなのは、もっと可愛い女の子!律はマッチョで汗くさそうで苦手!)
……つまり、絶望的にタイプじゃなかった。
だが、その「正反対」の関係が、なぜか誰よりも絵になっていた。
──そして、プロム当日。
体育館には煌めく照明と音楽。
それぞれのパートナーと踊るカップルたち。
高校生活の最後を飾る、華やかな舞台。
エリザベスは、彼女として連れてきたガールフレンドに、開始30分で裏切られた。
「ねえ、先輩と踊ってくるだけ。すぐ戻るって」
そう言った彼女は、戻ってこなかった。
気づけばエリザベスは、ひとり。
体育館の裏手で、ひっそりと涙をこぼしていた。
目は真っ赤に腫れていた。
「……エリザベス」
聞き慣れた低い声に、彼女は顔を上げる。
「……なによ。私を笑いに来たの?」
「……俺と、プロムに出ないか」
「は? 嫌よ。私のこと、好きなの?」
「いや、全然」
「はあ!? じゃあ放っといてよ!」
「俺も、さっき振られたばかりだ。
……高校最後の夜、ふたりで泣いて終わるのって、ダサいだろ?」
その言葉に、胸がぐらりと揺れた。
涙を隠す余裕もないまま、エリザベスは立ち上がり──
律の手を、無言で取った。
そして、ふたりが再び会場に姿を現したとき──
その美しさ、迫力、完璧なペアとしての存在感に、全校生徒の視線が釘づけになった。
律の元カノはグラスを落とし、
エリザベスを裏切った元ガールフレンドは青ざめた。
(……ざまあ。完璧なパートナーが、ここにいる)
音楽が始まる。
ふたりは何も言わず、ぴたりと呼吸を合わせて踊った。
足運び、目線、手のひら。すべてが、なぜかしっくりと馴染んだ。
それは、「恋人」ではない。
だけど、誰よりも強く支え合える、そんな対等な相棒の踊りだった。
──数ヶ月後、ふたりは同じ大学、ハーバードに進学する。
「まだ付き合ってないの?」
「……あのふたりは、なんなんだ」
そんな声は、何度も聞いた。
だけど、ふたりは笑って肩をすくめる。
「私たち、ちょっと相性悪すぎるからね」
「でも、気は合うんだ。不思議と」
──そう、最強で、最高の「親友」になったのだった。