イケメンIT社長に求婚されました─結婚後が溺愛本番です!─
「──えっ!? 私が……司会?」
会議室に響いた自分の声に、思わず口を押さえる。
イベント担当チームの会議中。
来週に控えた社内表彰式で、進行役を任されることになった。
なぜか、よりによって、私が。
「えーと……その、急でごめんなさい!
でも望月さんって声が聞き取りやすくて、以前のプレゼン資料も丁寧だったって評判で……」
後輩社員がぺこぺこ頭を下げる。
(そんなの、褒め言葉じゃなくて罠です!)
「ど、どうして私なんですか……!」
心の中では半泣きだった。
私は裏方気質。
人前で話すのが得意なタイプじゃない。
表彰式なんて、社長や役員も出席するのに──
(……社長)
瞬間的に、脳裏にあの甘すぎる顔が浮かぶ。
(あの人、これ知ってたら絶対……)
──案の定だった。
その日の夜。リビングのソファに座った律に、それとなく報告してみたら、
「ほう……壇上に立つんだね。君が」
紅茶を置く手が止まり、ふっと笑ったその顔が、まるで“獲物を前にした狼”だった。
「……やっぱり知ってたの?」
「もちろん。むしろ推薦したの、俺」
「はああああ!?!?」
「だって、君は可愛いし。緊張してる姿も美しいし。壇上で君が話すなんて、全社員に見せたくなるだろ?」
「……あの、私、社長のコレクションじゃないんですが?」
「俺の世界遺産だけどね」
「本気で言ってる!?」
もうムリ、この人どうにかして。
でも、律はまっすぐに言った。
「怖かったら言って。壇上じゃなくても、君の声を一番に聞きたいのは俺だから」
──ズルい。
その一言で、どれだけ不安が薄れたか。
どれだけ心が軽くなったか。
本人は、きっと気づいていない。
翌日。控室で司会原稿を抱えてガチガチに固まっていた私の前に、そっと差し出されたのは、小さな飴だった。
「……水野さん」
「緊張しているときは、甘いものが効きます」
彼は、にこりともしないまま、静かに言った。
「本番、隣で cue 出します。あなたが間違えても、誰も責めたりしません。僕が全部フォローしますから」
それだけを告げて、彼は原稿のチェックに戻った。
(……ほんと、ずるい人が多すぎる)
私は小さく笑って、飴の包みをそっと開けた。
(――大丈夫。壇上の下にも、味方はいる)
会議室に響いた自分の声に、思わず口を押さえる。
イベント担当チームの会議中。
来週に控えた社内表彰式で、進行役を任されることになった。
なぜか、よりによって、私が。
「えーと……その、急でごめんなさい!
でも望月さんって声が聞き取りやすくて、以前のプレゼン資料も丁寧だったって評判で……」
後輩社員がぺこぺこ頭を下げる。
(そんなの、褒め言葉じゃなくて罠です!)
「ど、どうして私なんですか……!」
心の中では半泣きだった。
私は裏方気質。
人前で話すのが得意なタイプじゃない。
表彰式なんて、社長や役員も出席するのに──
(……社長)
瞬間的に、脳裏にあの甘すぎる顔が浮かぶ。
(あの人、これ知ってたら絶対……)
──案の定だった。
その日の夜。リビングのソファに座った律に、それとなく報告してみたら、
「ほう……壇上に立つんだね。君が」
紅茶を置く手が止まり、ふっと笑ったその顔が、まるで“獲物を前にした狼”だった。
「……やっぱり知ってたの?」
「もちろん。むしろ推薦したの、俺」
「はああああ!?!?」
「だって、君は可愛いし。緊張してる姿も美しいし。壇上で君が話すなんて、全社員に見せたくなるだろ?」
「……あの、私、社長のコレクションじゃないんですが?」
「俺の世界遺産だけどね」
「本気で言ってる!?」
もうムリ、この人どうにかして。
でも、律はまっすぐに言った。
「怖かったら言って。壇上じゃなくても、君の声を一番に聞きたいのは俺だから」
──ズルい。
その一言で、どれだけ不安が薄れたか。
どれだけ心が軽くなったか。
本人は、きっと気づいていない。
翌日。控室で司会原稿を抱えてガチガチに固まっていた私の前に、そっと差し出されたのは、小さな飴だった。
「……水野さん」
「緊張しているときは、甘いものが効きます」
彼は、にこりともしないまま、静かに言った。
「本番、隣で cue 出します。あなたが間違えても、誰も責めたりしません。僕が全部フォローしますから」
それだけを告げて、彼は原稿のチェックに戻った。
(……ほんと、ずるい人が多すぎる)
私は小さく笑って、飴の包みをそっと開けた。
(――大丈夫。壇上の下にも、味方はいる)