イケメンIT社長に求婚されました─結婚後が溺愛本番です!─
帰宅後。

バスルームのドアが開いて、湯気とともに彼が出てきた。

髪から雫が滴り、バスタオルを無造作に肩にかけたまま、律は真っ直ぐにベッドへと歩いてくる。

私はベッドの上で、パジャマのボタンをかけ直しながら、息を整えていた。

──まだ、何も始まっていないのに。

「そのパジャマ、見慣れてるはずなのに」

律がぽつりと言った。

「……今日は、やけに色っぽく見える」

「え……ちょっと、やめて。そういうの……」

「やめない」

そのまま、彼はベッドに膝を乗せる。

「今夜は、俺の独占欲が限界だから」

低い声と、濡れたままの髪からふわりと石鹸の香りが漂ってくる。

「壇上の君も、綺麗だった。……でも、あの隣にいたのが俺じゃなかったのが、悔しかった」

私の隣に座った律が、パジャマの胸元に手を滑らせる。

ボタンひとつ外れるたび、呼吸が浅くなっていく。

「壇上じゃ触れなかったから……今、取り返したい」

「り、律……ちょっと、今日は……」

「疲れてるの、分かってる。でも」

そっと抱きしめられる。

彼の腕は、いつもよりも強く、深く、まるで所有を確かめるみたいに、私を閉じ込めた。

「水野が優しくて、頼りになるのも知ってる。……でも、君の一番近くにいたいのは、俺だ」

唇が首筋を這う。
優しいのに、どこか切迫していて、心ごと溶かされそうだった。

「俺だけが知ってる顔を、もっと……増やさせて」

「……ん、や……律……っ」

パジャマのボタンがひとつずつ、彼の指でほどかれていく。

生地越しに撫でる手のひらが熱くて、震えそうになる。

「俺だけが触れて、俺だけが抱いて、君だけが俺の名前を呼ぶ。……それがいい」

ベッドの軋む音と、肌に落ちていく熱。
何度もキスを繰り返しながら、彼はまるで祈るように私を抱いた。

「陽菜……誰にも渡したくない。ずっと、君は俺のものだよ」

その声が、深く、胸の奥に届く。

私は黙って、彼の腕の中に沈んだ。

 

──その夜。
独占欲と愛情の境界が溶けあうように、私たちは何度も確かめ合った。私が、誰のものなのかを。
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