【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
食器を洗う水音がキッチンに響いていた。
紬は袖をまくり、丁寧にひとつずつ皿を洗っていく。
さっきまで一緒に食べていたカレーの香りが、まだほんのりと残っている。

そこへ——

「……っ」

背後から、ぴたりと温もりが重なった。
強く、でも優しく、背中からぎゅっと抱きしめられる。

「隼人くん、ちょっと待って。洗ったらすぐいくから」

そう声をかけても、彼は微動だにしなかった。

「ここで待つ」

腕の力がほんの少し強まる。
その甘えるような力加減に、紬は小さくため息をついて、洗い終えた皿を水切りかごに収めた。

「じゃあさ、先にお風呂入ったら? そしたらゆっくりできるでしょ」

少し間があって——

「……わかった。寝ないでよ」

その言葉とともに、ようやく背中の温もりがすっと離れる。

紬は肩越しに振り返り、彼の去っていく後ろ姿を見送った。

(……可愛いなあ、もう)

だんだんとわかってきた。
この人は、怒っていても拗ねていても、最後には必ず“甘え”に変わるのだと。

(なんか……手のひらで転がしてるみたい)

そう思ったら、思わずくすりとひとり笑ってしまった。

夜はまだこれからだ。
このあと隼人が、どれだけ“甘やかされる”のを楽しみにしているか——

紬には、手に取るようにわかっていた。
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