【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
食卓の上には、湯気の立ち上るカレーが二皿。
隼人は椅子に腰を下ろすなり、湯気越しにカレーを見つめ、ぴくりと口角を上げた。

「……ほんとに、俺のために作った?」

「当たり前でしょ。今日、甘やかしてあげるって言ったし」

紬が笑うと、隼人は満足そうに小さく頷いた。

「じゃあ……ほんとに甘やかしてくれるんでしょ?」

「うん、約束」

「ほんとに?」

「ほんとにほんとに」

また聞いてきた。
紬はスプーンを手に取りながら、くすくすと笑う。

(……なんなの、もう。かわいすぎる)

「いただきます」

隼人はカレーを一口頬張ると、ほっとしたように目を細める。

「おいしい?」

「世界一うまい」

そう言って、ぱくぱくと次の一口へ。
勢いは止まらない。
まるで好きなものを与えられた子どものように、目の前のごはんだけに夢中になっている。

その姿を見つめながら、紬はスプーンを口に運びつつ、胸の内に静かに湧く思いに目を落とした。

(……たぶん、隼人くんって、過去にいろんなことがあって、ちょっと不安になりやすいのかな)

誰にも弱さを見せない人が、今こうして何度も「ほんと?」と尋ねてくる。

それはきっと——

(それを、そのまま私に見せてくれるっていうのは、信頼してくれてるってこと……なんだよね)

胸の奥に、じんわりとした温かさが広がる。

「ねえ、紬」

「ん?」

「このカレーさ……来週も作ってくれる?」

「……いいよ。じゃあ来週も“甘やかしセット”つきね」

「やった」

にこにこしながらルーをご飯にからめる隼人。
その表情には、昼間の冷徹な弁護士の影など、微塵もなかった。

まるで、愛されたいと全力で訴える年下の彼氏みたい。

(……ほんと、ギャップがすごい)

紬はもう一口、カレーを食べた。
ほんの少しだけスパイスの効いたルーが、心までじんわりと温めてくれるようだった。
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