【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
朝の会議室。
ガラス越しに朝陽が射し込むなか、紬は資料を机に並べながら、一歩遅れてやってきた佐藤と片山を迎え入れた。

「おはようございます」
「おはよう、成瀬さん……高森案件、やっぱり訴訟の方向で固まりそうですか?」

片山が椅子に腰掛けながら尋ねる。
その横顔は険しく、腕を組んだまま会議室の窓の外に視線を投げた。

「ええ、クレームの内容に揺れがないですし、当初から一貫しています。こちらとしても慎重に対応していくしかありませんね」

淡々とした紬の声に、佐藤は少し身をすくめたようにして手元の資料に目を落とした。

「……訴訟に発展したら、どうなっちゃうんですか……?」

ぽつりと漏らしたその声は小さく、不安が滲んでいた。

紬は佐藤を見やって、落ち着いた口調で答える。

「その可能性も見越して、一条先生とは事前に情報共有しています。いざという時も、法に則って、適切に対処するだけですから、大丈夫ですよ」

その言葉を聞いた瞬間、佐藤の顔には明らかにさらに陰が差した。
“一条先生”という名前が出たことが、彼にとっては新たなプレッシャーになったようだった。

それを見た片山が、ふう、と息を吐きながら口を開いた。

「佐藤」
「は、はいっ」

「一条先生は確かに厳しいが、誠実で、とても頼りになる弁護士だ。物事に真摯に向き合う姿勢は、お前にもきっと学べることがあるはずだよ」

静かな声だったが、その言葉には揺るぎない信頼が感じられた。

佐藤は目を瞬かせてから、ゆっくりと頷いた。

「……やっぱり、一条先生ってすごい人なんですね……」

その言葉に、紬は一瞬、片山の表情に目をやった。

さりげなく佐藤の不安を和らげるような言い回しをしてくれたことに、ほんの少しだけ申し訳ない気持ちが胸に広がる。

紬は小さく頭を下げて、片山に静かに会釈した。

片山はそれには気づかぬふりで、再び窓の外を見つめながら呟く。

「さて……どうしたもんかな……」

張りつめた空気が一瞬緩み、再び現実に目を向けるように三人は資料へと目を落とした。
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