【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束

炎上の火種

数日後の午後。昼休憩から戻ったオフィス内に、微かな緊張が走ったのは、佐藤の声がきっかけだった。

「成瀬さん……!これ……!」

席に戻るなり、佐藤がスマホの画面を紬の目の前に差し出す。そこに映し出されていたのは、SNSの投稿だった。

《保険金が支払われない?保険会社の闇》
《子どもが事故に遭っても、企業は冷たい対応ばかり。信じていたのに。》
《これが現実です。シェアしてください。#事故対応の闇 #泣き寝入りさせない》

投稿には、事故後に保険会社がどう動いたか、感情的かつ一方的な言葉で綴られていた。巧妙に編集された写真と、涙ながらの訴えをする女性の動画も添えられている。

紬は眉をひそめ、スマホを受け取ると詳細に目を通した。

「……これ、拡散されてる。」

ツイートには「3.2万リポスト」「5.8万いいね」の表示があり、コメント欄も憤りや同情の声で埋め尽くされていた。
「企業名まで出されてる……あの時のやりとりも、完全に歪めて……」

喉の奥がきゅっと締まる。
保険会社に明確な落ち度はない。
対応は法に基づいて粛々と進めてきた。
だが、SNSの中ではそんな理屈は通用しない。
感情が真実のように扱われる世界だ。

「どうしよう、これ……僕たち、標的にされてるんじゃ……」
佐藤の声が震える。

「大丈夫。焦らず、冷静に。」
紬はそう言いながらも、自分の手のひらにじっとりと汗がにじんでいるのを感じていた。

胸の奥に広がるのは、不安と怒りと、そして……どこか拭いきれない怖さ。
――これは、法廷の外の戦いだ。

「一条先生には……すぐ共有しなきゃ。」

その声は、どこか硬く震えていた。
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