【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
隼人は、ふっと笑うと、紬の手からそっとグラスを取り上げ、テーブルの上に静かに置いた。

目の前の彼女は、頬を仄かに染め、目元も緩んでいる。
伏せられた睫毛の間から覗くとろんとした瞳が、自分にだけ向けられていることに、心の奥がじんと熱を帯びる。

「……予測と準備、それが俺の仕事だからね」

柔らかな声色で囁きながら、ゆっくりと紬の髪に指を通す。
艶やかな黒髪が指の間をすり抜けて、肌に触れる香りに胸の奥が甘く疼く。

「ん……」

紬が小さく甘い息を漏らす。
その音に抗えず、わずかに開いた唇へ唇を重ねた。
かすかに残るワインの芳醇な香りが鼻先をくすぐる。

ゆっくりと、けれど確かな熱を込めてキスを深めると、
彼女の口元から、掠れた声が零れる。

「……すき……私も……」

その言葉の不確かさが、逆に隼人の胸を強く打った。
無防備で、嘘がなくて、ただただ彼女の本音だった。

「つむぎ……可愛いね、世界一可愛いよ。……愛してる」

耳元で囁きながら、指先で頬を撫で、背をそっと抱く。
体温が、呼吸が、ひとつに溶けてゆく感覚に、隼人は息を殺すように目を閉じた。

「……今日は、ちょっと効きすぎたな」

内心で呟きながら、紬の手を引き、静かにベッドへと導く。
掛け布団を整え、隣に横たえた彼女は、もう瞼を落としていて。

その寝顔に口元を緩めながら、そっと耳元に唇を寄せる。

「おやすみ、つむぎ」

照明のリモコンを手に、部屋の明かりを落とした。
柔らかな暗がりの中で、互いのぬくもりだけが、確かにそこにあった。
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