【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
「みんな落ち着け」

その場に張り詰めた空気を割るように、片山の低くも力強い声が飛んだ。
社員たちがざわめきを止め、視線を向ける。

「法務部も経営陣もすでに動き始めてる。こういう時こそ冷静に、な」

彼は成瀬に目を向けると、端的に指示を出した。

「成瀬、とりあえず月島の事務所に行ってくれ。一条先生と情報をすぐに共有したい。こっちから連絡はしておく。すぐ向かってくれ」

「はい、わかりました」

紬が頷くと、片山は続けた。

「佐藤、お前はここに残って社内対応を。中原茜は成瀬に同行してくれ」

「はいっ」

「了解しました」

佐藤が一歩前に出て、紬に向かって言った。

「成瀬さん、僕にできることがあったら、なんでも言ってください。コピーでも資料集めでも記録でも……ほんとに、なんでもやります」

その言葉に重なるように、後ろから声がした。

「先輩、僕もいつでも駆けつけます。言ってください。西田遼太郎っす!」

見ると、かつて紬が指導していた西田が、真剣な表情でこちらを見ていた。

紬はほんの一瞬、胸が詰まりそうになるのを感じながらも、力強く微笑んだ。

「ありがとう。……私、1人じゃないんだね。大丈夫」

そう口にしてから、深く息を吸って吐く。まっすぐ顔を上げると、茜に目を向けた。

「行こう、茜。」

「うん!」

資料をまとめた封筒を手に、紬と茜はオフィスを後にした。
自動ドアが開くと、冬の名残を溶かすような春の陽射しが二人に降り注いだ。

エレベーターを待つわずかな時間、茜がぽつりと漏らした。

「……あのツイート、見たとき、すっごい悔しかった。なんか……ほんとのことみたいな顔してて」

「うん。わかるよ。でも、だからこそ向き合わなきゃね。事実を、正しく伝えるために」

「……一条先生、きっと頼りになるよね」

紬は、思わず微笑んだ。

「うん。……頼りになるし、ちょっと面倒くさいとこもあるけど、絶対に、力になってくれる人だよ」

自然と足取りは早くなる。月島の法律事務所はもうすぐそこだった。
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