【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
隼人は朝から上機嫌だった。
今朝、紬の寝顔を思い出すだけで、胸の奥がふわりと温かくなる。
不思議なことに、そのせいで仕事の手も自然と速くなった。

午前中の依頼人面会を終え、書類に目を通していると、児玉がニヤニヤしながら近づいてきた。

「一条先生、なんか幸せそうですね」
わざとらしい口調で言い放つ。

隼人はすぐに真顔に戻り、冷たく返す。
「なんだよ。」

「俺にも優しくしてよー」
児玉はさらに食い下がる。

「なんでお前に優しくしなきゃいけないんだよ」
隼人は軽く鼻で笑った。

児玉がふと真面目な顔になり、興味深げに言う。
「どんな顔して紬さんに甘い言葉囁いてるのか、興味あるわ」

その時、近くで資料を作っていた山崎が、ほんのり顔を赤らめて口を開いた。
「一条先生、成瀬さんには一途ですよね…」

含みのある言い方に、児玉は得意げに胸を張る。
「そうそう。山崎ちゃん、遊び人の一条先生を更生させたのは紬さんだよ。感謝感激だよね。女性トラブルが事務所にないってだけで安心して仕事できるし」

隼人は眉間に皺を寄せ、殺気混じりの目で睨む。
「女性トラブルなんて起こしてないし、お前に迷惑かけたこともないだろ。それに名前で呼ぶなよ」

児玉と山崎は肩をすくめて笑い合い、嫉妬に燃える隼人の姿を見て楽しんでいた。
< 65 / 96 >

この作品をシェア

pagetop