【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
夕食の準備を終えた紬は、リビングのソファに腰を下ろし、ぼんやりとテレビの画面を見ていた。

そこには、最近世間を騒がせていた高森案件のニュースが映し出されている。

「元は、保険会社の不適切な対応に対し、複数の被害者が集団訴訟を起こした案件でしたが、本日、原告側が訴訟の取り下げを発表しました。

関係者によると、訴訟の背後には、金銭目的の炎上商法を狙ったSNSマーケターの暗躍があったとされています。

これにより、当初は世論を味方につけていたはずの動きが、一転して信用を失う結果となりました。

専門家は今回の件を、“現代の情報戦争の典型例”と評しています。」

画面には、にこやかな表情の高森が映り、背後には数台のスマートフォンを手にした人々の映像が重なる。

テロップでは、「SNSマーケターとして暗躍」「炎上商法の黒幕か」といった見出しが踊っていた。

紬は、かつて保険会社を叩きまくっていた報道が、まるで手のひらを返したかのように、一斉に掌を返したような様相に、少し言葉を失った。

その時、玄関のドアが開き、隼人が帰宅した。

彼は数秒、無言でニュースを見つめ、そして小さく息を吐いた。

「こうなるのは、予想してたけど……やっぱりな、って感じだな。」

隼人の声には、憤りと諦めが交じっていたが、それ以上の言葉はなく、ただ静かにテレビの前に座った。

紬はリモコンを手に取り、テレビの電源を切る。

「もういいよ、ご飯食べよっか。」

視線を隼人に向けると、隼人もほんの少しだけ笑みを返した。

「そうだな、今は普通の日常が一番だ。」

二人は淡い灯りの中、いつもの夕食に向かってゆっくりと歩み寄った。
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