【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
——そして約1時間後。

軽井沢駅に降り立つと、空気の違いがすぐにわかる。
夏の終わりとはいえ、東京の蒸し暑さとは比べものにならないほど爽やかで、風は涼しくて、少しだけ秋の匂いが混じっていた。

そこからさらにタクシーで走ること20分。緑のトンネルのような木々の間を抜け、やがて視界がふっと開ける。

「……えっ」

思わず息を呑んだ。

目の前に現れたのは、「軽井沢・クラリティーヒルズ」。
白を基調とした洋館のような建物に、石畳の中庭。淡い色の花が整然と並び、噴水がやさしく水音を立てていた。

「ここ、なの?」

「そう。泊まるのは、あの奥のヴィラ。建物一棟貸しで、周りに人もいない。ゆっくりできる」

涼しい顔で説明する隼人の横で、紬はしばし言葉を失っていた。

「……まって、ほんとにここに泊まるの? テレビとかでしか見たことないような場所だよ……?」

「事前に調べた中で、一番“紬が好きそうなとこ”選んだ」

さらりと言われたその一言に、胸がじんとする。
嬉しくて、くすぐったくて、でもどう返したらいいかわからなくて——気づいたら、隼人の腕にぎゅっとしがみついていた。

「……もう、好き」

「知ってる」

そんなやりとりに笑い合いながら、二人は洋館の扉をくぐった。

そこから始まる、特別な2泊3日が幕を開けた。
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