【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
軽井沢・クラリティーヒルズの2日目。

昼間は少し遠出して、美術館や雑貨店を巡る穏やかなデートを楽しんだ二人。
紬は終始笑顔で、まるでこの時間を抱きしめるようにして過ごしていた。

そして――夜。
ホテルのディナーホールの一角にある、特別個室へと案内される。

大きな窓の外にはキャンドルが並べられ、中庭の木々がライトアップされて幻想的な雰囲気を醸し出している。

白いクロスのかかったテーブルには、花束と、名前入りのメニューカード。

紬は「えっ…今日、こんな予定だったっけ?」と首をかしげるが、隼人はにこりと微笑むだけ。

「今日は、ちゃんとしたディナーにしようと思って」

そう言って向かいの席に座る隼人の顔が、ほんの少し緊張しているように見えた。
フルコースが始まり、料理はどれも美しく繊細で、紬の目が何度も輝く。

会話は途切れることなく、楽しく弾んでいた。
けれど、紬にはなんとなく胸の奥が落ち着かない。

そして、最後のデザートプレートが運ばれてきたとき――

「Dessert for Tsugumi」と書かれたそのお皿の上には、スイーツの脇に金の細い箱が添えられていた。

「え……?」

困惑する紬に、隼人がゆっくりと立ち上がる。そして、テーブルを回って紬の隣に膝をついた。

「紬」

その呼び方だけで、胸がきゅっと苦しくなる。

「俺の人生は、ずっと合理性と計算で成り立ってた。感情で動くなんて、向いてないと思ってた。でも――君だけは、どんな理屈より強かった」

隼人の指が、そっと小さな箱を開ける。
そこには、シンプルだけれど気品のあるリング。
中央に一粒だけダイヤが煌めいている。

「これから先も、毎朝起きて隣に君がいてくれて、夜にはただ“おかえり”って言ってくれたらそれでいい。…俺と、結婚してください」

ホテルの静けさの中で、その声は紬の心の奥に真っ直ぐ届いた。

紬は驚きで何度も瞬きをして、そして小さく笑った。

「……やだ、泣いちゃいそう」

そのまま隼人に手を差し出し、そっと言う。

「はい。お願いします」

隼人の指が紬の左手に指輪を通す。
ぴたりと、ぬくもりが馴染んだ。

立ち上がった隼人は、紬をやさしく抱きしめた。
頬に、額に、そして最後に、唇に。

ふたりだけの空間に、拍手も歓声もない。
けれどそれが、何よりも幸せだった。
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