【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
静かな秋の午後。
空はうっすらと金色に染まり始め、街路樹は赤や黄色に色づいている。
風にひらりと舞う葉の音が心地よい。
「寒くないか?」
そう言いながら、隼人がそっと自分の手を包んでくれる。
手袋を外したばかりの指先は少し冷えていたけれど、彼の手のひらはあたたかくて、心までほどけていくようだった。
「……だいじょうぶ。隼人がいるから、平気」
隼人は、横目で軽くこちらを見て、ほんの少し唇の端を上げた。
それだけの表情なのに、胸の奥がふわりと熱くなる。
向かっているのは、都心から少し離れた静かな美術館。
大きなガラスの外壁からは秋の光が差し込み、展示室には柔らかなピアノ曲が流れている。
館内では、手を繋ぐことはしなかった。
でも、隣に立つそのぬくもりが、指先よりずっと深く伝わってくる。
「これ、すごいね。光の使い方が」
「……君の部屋に飾ってある、あの写真と似てる」
「覚えてたんだ」
「どれだけ一緒にいると思ってるんだ」
言葉数は少ないのに、会話の端々に愛情がにじむ。
知らず知らずに笑みがこぼれて、絵画よりも、隼人の横顔ばかり見てしまう。
出口に向かう途中、隼人が再び手を取った。今度は、しっかりと指を絡めて。
「このまま、もう少し歩かないか?」
「うん」
夕焼けがにじむ道を、並んで歩く。
静かな湖畔の公園で足を止めると、彼がバッグから薄手のブランケットを出してベンチに敷いた。
「用意がいいね」
「寒がりな奥さんがいるからな」
自然に、肩を寄せ合って座る。
行き交う人々のざわめきが遠く、ふたりの世界だけがやけに穏やかで静かだった。
「……隼人と出会ってから、いろんな景色が変わった気がする」
「俺もだ。今まで見てきた世界が、全部意味を持ちはじめた」
その言葉に、胸がいっぱいになる。
手を繋いでいるだけなのに、こんなにも幸せで、満たされるなんて思わなかった。
「もう少し、こうしていよう?」
「もちろん」
日が暮れてゆく空を、ふたり並んで見つめながら──
これからもずっと、この手を離さないでいよう。
そう、心の中でそっと誓った。