【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束

ようこそ、僕の人生へ

澄んだ空気に包まれた軽井沢の朝は、静かでどこか神聖だった。
吐く息さえ白く凍る中、チャペルを囲む林の木々にうっすらと雪が積もり、世界はまるで銀色のレースで覆われたかのように美しかった。

成瀬紬と一条隼人が選んだこの場所、「クラリティーヒルズ」は、彼らの始まりの場所でもあり、今日という節目を迎えるにふさわしい、あたたかな祝福に満ちた空間だった。

チャペルの中では、招かれた人々が静かに席に着いていた。
職場の仲間たち、紬の両親。
普段のスーツ姿とは打って変わって、皆が少しだけ背筋を伸ばし、けれどどこかリラックスした笑みを浮かべながら、新郎新婦の登場を待っている。

最前列の一角に、茜と佐藤の姿があった。茜は深いワインレッドのドレスに身を包み、柔らかく巻いた髪を肩に流している。
佐藤は少し緊張した面持ちで、彼女の横に立っていた。
そんな佐藤の腕に茜がさりげなく手を添えると、彼は小さくうなずき、安心したように微笑んだ。
ふたりの左手には、お揃いのシンプルなリングが光っている。婚約にはまだ至っていないが、それが確かにふたりの“今”を象徴していた。

その隣、あかりはクリーム色のドレスで、華やかさの中に落ち着きを漂わせていた。
胸元に光る小さなネックレスに、ふと指を添える彼女の仕草を見て、隣の同僚がささやく。

「彼から?」──あかりはわずかに頬を染め、小さくうなずいた。
まだ式には姿を見せていないその彼を、あかりは穏やかな微笑みで心の中に招いていた。

中央やや後ろの席では、児玉と山崎が並んで座っていた。
あえて少しだけ距離を取っていたふたりだが、ふとした瞬間に視線が交わり、どちらともなく目を細めて笑った。

それだけで充分に伝わるものがあった。
傍らでそれを見た隼人は、すぐには気づかないふりをしたものの、心のどこかでその“気配”に微かに反応していた。

一番後方の席には、片山の姿があった。
落ち着いたグレーのスーツに身を包み、どこか誇らしげにチャペル全体を見回していた。
彼の目元には、もうすでに涙の気配がある。

「成瀬も…ほんと立派になったなあ」──その呟きは、娘を送り出す父のような深い感情を宿していた。

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