【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
夜の帳が下りた静寂のなか、
一条隼人は、彼の「妻」となった紬を、まるで神聖なもののように見つめていた。

シーツの中、紬は一糸まとわぬ姿で、彼の隣に横たわっている。
頬はほのかに紅潮し、深い吐息が、まだ残る熱を物語っていた。

隼人の指先が、彼女の髪をすくい上げ、首筋をなぞる。
それだけで紬の体はふるりと震えた。
ただの愛撫ではない。
そこには、「妻を慈しむ」という誓いが込められているようだった。

「……まだ、足りない」
隼人の声は、低く、けれど限界まで感情を抑えている。

「……うん」
紬の返事は、ごく小さく、それでも明確だった。

互いの身体を知り尽くしていたはずなのに、この夜は違った。
指の角度、唇の圧、吐息の深さ──
それら全てが、契約でも所有でもなく、「信頼」の上に成り立った深い交わりだった。

彼の指が、やわらかな胸の稜線をなぞり、唇がゆっくりとお腹を這うように降りていく。
そのひとつひとつに、紬の背がのけ反り、名を呼ぶたびに、甘やかな声が漏れた。

「紬……」

その名を呼ぶ声は、恋人ではなく、もう夫としてのそれだった。

彼はすべての意識を彼女に集中させていた。
ひとつひとつ、確かめるように、愛するという行為を重ねていく。

やがてふたりは、再び重なった。
音も言葉も忘れて、ただ熱と体温だけが部屋を満たしていた。

汗ばんだ肌が擦れ合い、瞼の裏に光が走る。
深く、そしてまた深く──
一度、また一度と、波が押し寄せては去っていく。

「もう……無理かも……」
紬がか細く、震える声で言ったとき、隼人は額にキスを落とした。

「……もう少しだけ。君を感じていたい」

その言葉に、紬は目を閉じ、静かに頷いた。

ふたりの身体はもう何度目かの頂きを迎え、ようやくゆるやかに沈んでいった。

その瞬間、隼人の瞳からぽろりと涙がこぼれ落ちた。
彼は気づかれまいとそっと目を伏せるが、紬はその涙を見逃さなかった。

「泣いてる……?」

隼人は小さく苦笑いをしながらも、言葉にならない感情が溢れ出て止まらなかった。
彼の中に渦巻く幸福と安堵、そしてこれからも紬を守り抜く決意の重み。

紬もまた、涙をひとすじ流した。
それは感謝の涙であり、これまでのすべての困難を超えてやっと得た「彼との未来」を確かめるものだった。

夜の終わりに、隼人は後ろから紬を抱き寄せたまま、囁いた。

「君がいてくれて、本当によかった」
「……私も。あなたが、隼人が、私の人でよかった」

ぴたりと重なる背と胸。指先が絡み、心臓の鼓動が重なっていく。

外では、まだ雪が降り続いていた。

けれど室内は、炎よりもあたたかく、
まるで「ふたりの世界」だけが、別の時を刻んでいるかのようだった。

この夜、彼と彼女は、
愛という言葉すら超えて、ひとつになった。
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