【番外編】孤高の弁護士と誓いの光 — 未来へ紡ぐ約束
チャペルに満ちる静けさの中で、神父の穏やかな声が響いた。

「一条隼人さん、成瀬紬さん。
おふたりは、これからも互いを敬い、支え合い、
健やかなるときも、病めるときも、変わらぬ愛をもって生きていくことを誓いますか?」

その瞬間、ふたりの視線が絡む。
まるでこの世界に、自分たちしか存在しないかのように。
隼人はゆっくりと、深くうなずいた。

「はい、誓います。」

その声は低く、落ち着いていて、
けれど確かに胸の奥から出た言葉だった。

続いて、紬が小さく息を吸い込み、笑顔を浮かべる。

「誓います。」

涙がこぼれそうになるのをこらえて、彼女は隼人の目を見つめたままそう言った。
その瞬間、出席者の中に小さなすすり泣きが広がり始める。
茜はあからさまに目頭を押さえ、佐藤はどこを見ればいいかわからずキョロキョロしていた。

神父が、指輪を手に取る。

「この指輪は、永遠の愛の象徴です。
互いの指にこの指輪をはめ、誓いを形にしてください。」

隼人が小箱からリングを取り出す。
淡い光を帯びたその指輪を、紬の左手の薬指にそっと通す。
彼の指先が触れるたびに、紬の胸の奥がふるえていた。

続いて紬が、同じように隼人の左手に指輪を重ねる。
指が少し震えてしまい、通すのにほんの一瞬手間取るが、
隼人が静かに目を細めて「大丈夫」と小さく笑った。

指輪がはまり、指がぴたりと重なる。

その瞬間、チャペルの窓の外で、ふいに風が雪を巻き上げた。
それはまるで、空そのものが祝福を舞い上げたかのようだった。

「それでは、おふたりを夫婦として祝福します。
さあ、キスを──」

言い終える前に、隼人がそっと紬の肩に手を添えた。
紬は目を閉じ、自然に顔を上げる。
唇が重なったその一瞬、世界は時間を止めたかのように、
誰もが、見つめ、そして、微笑んでいた。

そのキスは、これまで積み上げた日々と、これから始まる未来を結ぶ静かな契約だった。
拍手が、優しく、けれど確かに広がる。

あかりは胸元のネックレスをそっと押さえながら笑い、
茜は佐藤の腕に寄りかかって「いい式だったね」とささやいた。

片山は、ぽんと手を打ち、「ああ、最高だな」と短く呟いた。
児玉と山崎は、なぜか互いの目を見ないまま、それぞれ笑っていた。

そして、ふたりは振り返る。

たくさんの祝福に包まれて、
雪のチャペルの扉が開く──

ふたりで歩き出す、その先にある人生を、
光と、静かな幸福のなかで迎えながら。
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