幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「ワケアリ女性とばかり付き合うのはそれで精神的なバランスをとっているからだと思っていました。女性から必要とされることで自己肯定なさっているのかと」

「なるほどね」

それで社長も俺にうるさく女性関係について言及してこなかったわけか。

「そんな弱い人間じゃない」

「そうですね。そこまで可愛げのある人じゃありませんでした。すみません」

心から申し訳ないって顔するなよ、こいつは。
すっと渡瀬は背筋を伸ばして一礼する。

「それでは失礼します。複数つきあっていたのが一人になるのは喜ばしいことです。健闘を祈ります」

コツコツと大きいヒール音をたてて渡瀬は去っていった。
ドアを閉めて部屋の中に戻る。
渡瀬がいなくなり、しんっとした無音の空間が心地いい。
まったく、あいつはうるさすぎる。
キッチンに行くとサイダーのペットボトルが置いたままになっていた。
冷蔵庫にいれたつもりが考え事をしていたのか、いれてなかったようだ。
自分で思っているより、一人になったことが堪えているのかもしれない。

「自己肯定ね……少しは遠慮してものを言えよ」

俺は母の呪縛から、まだ抜け出せてないのかもしれない。
愛情を欲していたあのガキの頃のまま。
母を思い出すと感傷的になりすぎる。
冷やすのは頬じゃなくて頭だな。
サイダーのペットボトルを手にし、ゴツッと額にあてた。
サイダーはもうぬるくなっていた―――それでも、今の俺にはそれが唯一感じられる人のぬくもりだった。
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