幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「契約書はもらったので帰ります。この仕事の伴奏者としてウチの事務所のピアニスト恵加(めぐか)さんを選んでおきましたから」

「はぁ?なんであんなやつと」

「梶井さんになびかず、冷静に接することができるからです」

渡瀬は迷うことなくきっぱりと言いきった。
俺になびかないね。
深月にはずいぶんと入れ込んでいるけどな。

「腕は確かですし、色々な仕事をすることは彼女にとってもいい経験になりますから」

「俺の名前で一緒に売り込もうってことだろ」

「ぶっちゃけるとそうです」

渡瀬は明日のスケジュールを書いた紙を渡した。

「今度は遅刻しないでくださいよ」

「全員と別れたから遅刻のしようがない」

「は?」

「付き合っていた女と別れた。本気で付き合いたい女ができた」

「冗談でしょう?」

「なんだ。褒めないのか」

渡瀬はうーんと唸って難しい顔をした。

「それでメンタルのバランスがとれるなら構いません」

「どういう意味だ」

俺はずっと一人だった。
今までも必要以上に関わらせていない。
誰も。
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