幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
ふと視線を走らせると逢生がチェロを手にしていた。

「逢生、練習してたの?」

「そうだよ」

チェロに対しては真面目よね。
逢生は私を見て微笑んで私もつられて笑う。

「奏花が好きな曲、なにか弾こうか?」

「じゃあ、ドビュッシーの月光」

「奏花、その曲好きだね」

「そうね。落ち着くから」

―――逢生みたいで。
マンションの窓から見える夜景を背に逢生はチェロを弾いてくれる。
私のためだけに。
恋愛感情があれば、ドキドキするシチュエーションのはずなのに私は安心してウトウトと眠りそうになってしまう。
梶井さんとは全然違う。
私の感情をかき乱して苛立たせる梶井さん。
恋愛感情ってなんだろう。
私がもっと恋愛上手ならよかった。
そしたら、答えに迷わなかったはずだから。

「逢生、もう一度弾いて」

「いいよ」

曲が終わってもまた私はそう言っていた。
私の心が落ち着くするまで繰り返して。
ぺたんとテーブルに頬をつけた。

『深月に向ける感情は恋でも愛でもない。安全な男ってとこだな。それで深月と恋愛できると思えないね』

まるで呪い。
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