幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「可愛いですね。子犬が遊んで転がっているみたいで」
子犬のワルツねぇ。
食えない男だ。
子犬とあの三人をかけたつもりか。
宰田らしい角のない音、滑らかで軽快で人を明るくさせるような曲だった。
二分程度の短い曲でさらりと終わらせる。
宰田は弾き終わると拍手をもらっていた。
拍手をもらえるだけの演奏はしていた―――と思うが、宰田は苦い表情を浮かべて席に戻ってきた。
「これでわかったでしょう?僕と梶井さんは違いますよ」
「違うほうがいいですよ。世界が梶井さんを大量生産しなくてよかったと心底思っています。チェロ以外で役に立つのは少子化対策くらいでしょうから」
じろりと渡瀬をにらんだが、平然としていた。
そうですね、ありがとうございますと宰田もお礼を言っている。
「上手な演奏と感動させる演奏は違います。梶井さんは大勢の人に聴かせるために生まれてきた人間なんですから。もっと自分を大事にして演奏家として細く長く生きてくださいよ」
「細くは余計だ」
舌打ちしてウィスキーベースのカクテルを口にした。
琥珀色のカクテルを眺めて目を閉じる。
眩暈がする。
きっとこれは人生初の失恋だ。
思っていた以上に俺は彼女のことが好きだったのだと気づいてしまった。
女性としてだけでなく、彼女の存在を必要としている。
たとえ、今、俺のことを少しも思い出していなかったとしても可能性を捨てたくなかった。
まだ―――
子犬のワルツねぇ。
食えない男だ。
子犬とあの三人をかけたつもりか。
宰田らしい角のない音、滑らかで軽快で人を明るくさせるような曲だった。
二分程度の短い曲でさらりと終わらせる。
宰田は弾き終わると拍手をもらっていた。
拍手をもらえるだけの演奏はしていた―――と思うが、宰田は苦い表情を浮かべて席に戻ってきた。
「これでわかったでしょう?僕と梶井さんは違いますよ」
「違うほうがいいですよ。世界が梶井さんを大量生産しなくてよかったと心底思っています。チェロ以外で役に立つのは少子化対策くらいでしょうから」
じろりと渡瀬をにらんだが、平然としていた。
そうですね、ありがとうございますと宰田もお礼を言っている。
「上手な演奏と感動させる演奏は違います。梶井さんは大勢の人に聴かせるために生まれてきた人間なんですから。もっと自分を大事にして演奏家として細く長く生きてくださいよ」
「細くは余計だ」
舌打ちしてウィスキーベースのカクテルを口にした。
琥珀色のカクテルを眺めて目を閉じる。
眩暈がする。
きっとこれは人生初の失恋だ。
思っていた以上に俺は彼女のことが好きだったのだと気づいてしまった。
女性としてだけでなく、彼女の存在を必要としている。
たとえ、今、俺のことを少しも思い出していなかったとしても可能性を捨てたくなかった。
まだ―――