幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
今、気づいたけれど梶井さんの部屋はほとんどなにもない。
だから、いやでも目についてしまった。
梶井さんの仕事依頼の中に海外からのオーケストラ出演依頼があった。
それを梶井さんが断る内容の返事。
途中まで書きかけてやめてあったけど、首席チェロってなかなかなれないものじゃないのかな。
本当に断ってしまうのだろうか。
逢生と似ていると思ったのはこういうところなのかもしれない。
執着心が薄い―――何事にも。
とはいえ、私がなにか言える立場でもないし……
ネギを手にした。

「うどんでいいですよね?」

「奏花ちゃんが作ってくれるものなら、なんでもいいよ。看病されるのっていいなぁ」

「はあ……。梶井さんなら看病してくれる女の人の十人や二十人いそうですけど」

「さすがの俺も二ケタはきついかな」

冗談だったのに真面目に答えないでほしい。
それにしてもキッチンに鍋一つしかないって。
冷蔵庫にはお酒と生ハム、チーズくらい。
なにを食べて生きてるのやら。
うどんのだし汁を作り、ネギを切る。

「梶井さん、ゼリーも買ってきたのでどうぞ」

「ありがとう」
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