幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
渋木さんは演奏する曲数が多いらしく、じろりと二人をにらんで一喝した。

「うるさい」

たった一言で二人は静かになった。
影の番長は渋木さんね……
今にも説教が始まりそうな雰囲気だった。

「あ、奏花ちゃん」

ナイスタイミングとばかりに陣川さんが私に声をかけた。
逢生がむうっとした顔をしていた。

「なによ」

「先に梶井のとこ行った」

ドアの音でも聞こえたのだろうか。
本当に耳がいいんだから……

「花束と差し入れを持って行ったのよ」

はい、どうぞと逢生に渡すと嬉しそうな顔をして花束に顔を埋めていた。
そして待つこと一分。
バッと顔をあげて言った。

「俺は騙されない!」

なにがよ。
私がいつだましたっていうのよ。
陣川さんと渋木さんが苦笑してる。

「梶井に会いに行った!」

「行ってよかったって思ってるわよ」

逢生は悲しい顔をした。

「だって、ここはこんなに賑やかなのに梶井さんのところは静かだったから。寂しいでしょ?」

すかさず渋木さんが反論した。

「好きで賑やかなわけじゃない」

ま、まあね。
確かにね。
でも、陣川さんは違っていた。
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